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陸路国境を越える時のこと タイ=マレーシア その一

日本では「外国にいく」といえば、船か航空機しかないので、実感がないと思いますが、世界では陸路国境でつながっている地域のほうが圧倒的に多く、その国境にすべてフェンスが立っていたり検問所があるわけではありません。

 そして、そこを利用する人も日常的に国境を超えて隣国へいっているのです。

マレーシアのジョホール州は橋でシンガポールとつながっており、シンガポールへ「通勤」する人も多いので、国境超えのバスが普通の定期バスとして走っています。もちろん、バイクや車で通勤している人も多いです。

 シンガポールは物価、特に住居費などが高いので、ジョホールバルに住んでいて、シンガポールに通うというのはもう30年以上前から常態化してましたが、ジョホールバル側の発展と整備により、シンガポールから日常の買い物にバスで来る、入国管理手続きはマレーシア人は電子パスをもっているので、日本の電車改札のように通過してます。そしてマレーシア側のショッピングモールに直結しているので、野菜とかパンとかをマレーシア側で買って帰る(どのみちシンガポールの食べ物は輸入品依存です)ということになってました。完全に管理された国境です。

 ところが。

これが、タイとマレーシアの陸路国境だとまだ、そこまで一体化してないので、おかしなことも起こります。

 まず、マレーシア人でタイとの国境に接している州(プルリス、クダー、クランタン、ペラ)などは、特別パスとして越境するための簡便なのを取得できます。歴史的経緯で、そのタイとマレーシアの国境地域には縁者が分布しているからですが、いまは単純に住居で決められます。

 そしてタイとマレーシアをむすぶ、陸路国境の一番大きな動脈は、アジアハイウェイの一部であるマレー半島縦貫道で、マレーシア側のBukit Kayu Hitamとタイ側のSadaoを結んでいます。双方の入国管理局の間は歩いていける500mほどですが、間にFree Tax Zoneがあり、これはマレーシア側になります。

 国境を観察していて面白いのは、タイからくる車はタンクローリーピックアップトラックが多いのに対し、マレーシア側からはベンツのセダンなどの普通乗用車が多いのです。ここの国境を通る人は別に隣のタイと通勤しているわけではありません。タイは仏教国ですし、マレーシアの国教はイスラームです。そして南タイの第一都市であるハジャイはもともと華人が開いた町で、シーフードやツバメの巣などの料理で有名ですが、基本的に華人の町であり、中には売春宿などもありますので、「マレーシアの公務員は格段の理由がなければハジャイにいくことは禁止」というのをきいたこともあります。

 なので、ハジャイに行く人は主に観光客や華人系のビジネスマンが多い。タイ、マレーシア人でない場合も、長距離バスでペナンからハジャイ、ハジャイからプーケットやクラビー、またはバンコクへというパターンをよく見ます。

 その観光客ですが、普通は日本人が思っているほど鉄道は使いません。マレーシアもタイも車社会で、鉄道はむしろ外国人観光客が喜んで乗ってます。

 その国境ですが、まるで日本の高速道路入り口のような作りになっていて、まずは車に乗ったままパスポートを出して出国スタンプを押してもらいます。それから車をタイに入国させるためには「ブルーブック」と呼ばれる、車が自分の持ち物であることをしめす証明書(マレーシアには車検証はありません)をみせないといけません。タイで安く売っぱらってくることがあるからです。マレーシアは自国で車を生産してますので。

 そして、バスの人は一旦バスからおりて、同じくパスポートチェックを受けて、時には歩いてタイ側の入管に向かい、入国スタンプを押してもらうとそのあとにバスが待っています。荷物検査もあります。密輸が多いからです。

 タイとマレーシアの国境は海路を含めて7つほどありますが、ほぼすべて通った経験があります。深南部の国境は近年完成してますが、タイ側のテロの事情で開通してないのかも。できたばかりのときに見学にいきましたが。

 そして、ハジャイから帰ってくる華人系観光客が多いので、タイ側ではパスポートチェックを急いでやってくれますが、長蛇の列です。

 で、こんなことがありました。

 タイから出国のスタンプをみると、入国した時から二ヶ月も前のスタンプになっているじゃないですか。ゴム印で押しているので、間違っているのですね?ということは、その日ここの国境を通った人は大勢、間違った日付でタイを出国しているわけで、それに気がつかないというか、ゆるいというか、シンガポールとちがったミスがあります。

ええのかそれで?